お酒との付き合い方
[2024.03.09]
タバコとくればお酒です。酒は飲んでも飲まれるなとはよく言いますが、酒を飲める量は肝臓の解毒作用に依存します。そしてその解毒力には個人差が大きく、全く飲めない方と、一升酒を食らっても翌日平気という方まで千差万別です。飲めない方は言われなくても自分の適量をご存知です。問題は飲める方、ある程度飲んでも日常生活に支障ないという方です。検診ではγ-GTP が高いよと指摘されてもそれ以外の数字は問題なかったり、軽い脂肪肝が指摘される程度で終わることが多い場合です。しかしお酒のダメージは飲酒量に依存しますから徐々に肝臓も弱り、むくみっぽくなったり、ある日γーGTPさえもあまり上がらなくなったり、体のタンパク質(アルブミン)やコレステロールが低下が見られるようになり、徐々に表に出る前段階となります。そしてある日足が浮腫んだり、目の白目や尿が黄色くなり(黄疸)、お腹が膨れてきたり(腹水)といった悪い兆候が出てきます。これですらまだ節酒や断酒で回復可能ですが、繰り返すことによってやがて肝硬変となり、黄疸や腹水がコントロールできない非可逆状態となり、肝臓がんや食道静脈瘤といった致死性の合併症を発症するに至ります。困ったことに肝硬変に至っても、飲み方次第で肝臓は踏ん張りますから、ギリギリまで飲みながら、場合よっては入退院を繰り返すことになりますが、この時期には社会生活(仕事など)がかなり厳しい状況となっているわけです。それでも「このまま行くと(飲み続けると)死ぬよ」といっても飲み続ける方が珍しくない訳で、研修医の頃は「本当に死ぬまで飲むんだ!?」と驚いたものです。アルコール依存症として治療をやろうにも、本人に意思がなければ施設も門前払いですし、嫌酒薬も飲まなければ意味がありません。どのようにしてうまく付き合うか?というのは答えのないものと認識しています。歯を食いしばって休肝日を作っても、明けた翌日には反動で浴びるように飲むくらいなら適量を毎日摂ったほうがマシと考えます。適量の定義は酒量であったり、時間であったり、何でも良いのですが、一定の基準を決めて先ずやってみることだと思います。定期的に血液検査をしたりするのも、医者と情報共有する意味で良いと思います(一人で抱え込まないこと)。時々脱線しても、また軌道修正して継続することが大事だと思います。もう一つ注意点としては飲まないと眠れないという状況があるとすれば、一旦断酒して入眠剤でのコントロールに移行することも大事です。そういう意味では晩酌してコテンキューというのはとても良い飲み方かもしれません。自分の経験をいうと、病院勤務していた時期は自宅でリラックスしたいがために酒量と疲れのバランスが取れなくなり、酒の入ったコップを持ったまま寝入ってコップを落とすという状況が出て、家内にも注意され、我に返ったことがあります。ちょっと飲んで寝てしまえば良いものを、やめ時が当時わからなくなっていたんでしょう。ことほど左様に酒との付き合い方には正解はありません。自分で自覚してやっていかないと、というのが結論です(諦めずに)。