オゼンピックと妊娠
[2024.05.05]
オゼンピックという固有名詞から入ってしまいましたが、これは新しいタイプの糖尿病治療薬の一つで、GLP−1製剤という範疇に入ります(他にも何種類か既に市場に出ています)。すい臓からのインスリン分泌を促し、食後の高血糖を抑えると同時に食欲を低下させることにより、血糖コントロールを進めます。作用機序自体が新しいため、まだあまり普及しているとは言えませんが、食事管理や運動、従来の糖尿病薬ではコントロール不十分な方には有り難い存在です。しかし、この血糖低下作用と並行して体重減少作用が認められるとして、肥満対策としての側面に注目が集まっています。なかには本来の糖尿病薬としての役割よりもダイエット薬としての意義が重要視され、患者さんへの十分な説明ないまま投与され、トラブルを起こしていると問題になりました。しかしながら最近は肥満対策役薬として正式に投与規定が整理され、普及が進んでいる状況とのことです。腸閉塞や嘔吐などの消化器症状には注意が必要ですが、今後専門医のもとでの投薬が進んでいくと思われます、そんななか、日本に先んじて投与が開始された海外からの報告で不妊治療中の妊娠例が増加しているという報告がありました。これには医学的にどういった背景があるのかは推測の域はでないようですが、糖尿病薬からの肥満対策薬へ、今度は妊活へと副産物的な報告が先行している印象があり、今後の薬の存在意義としては十分慎重に進めてほしいという感じがしています。