良いことばかりじゃないピロリ菌除菌
[2024.09.28]
酸性の胃の中に潜むピロリ菌が発見され、難治性の胃・十二指腸潰瘍などの原因のひとつとして除菌が行われてきました。その後、ピロリ菌と胃がんの発症に因果関係が認められるとして、除菌対象が一気に拡大した経緯があります。ピロリ菌がいても症状が出る方は約30%程度と言われたわけで、無症状のかたも胃がんの発症予防として除菌を勧められてきました。現在の保険診療の範疇でピロリ菌除菌達成率は90%前後と高いわけですが、一方で除菌後の胃カメラ観察において従来(除菌前)と比較して、典型的でない早期癌や非常に異常を指摘しにくいガンが増えたと報告されています。これは頻度・統計的にどうだというわけではなく、現場の専門の内視鏡医たちが肌感覚で感じている実感だと思います。裏返していえば、折角除菌を達成して発がんのリスクを減らしたのに、注意をしないと早期癌を見逃すリスクが出てきたとも言えなくありません。熟練の内視鏡医たちはまだしも、まだ修練中のようなDrにとっては気の抜けない時代になっているのかもしれませんね。今後はAI内視鏡などがこれらの落とし穴を埋めてくれる時代が来ることを期待しています。