検診データの読み方
[2024.07.14]
健康診断のデータに関する相談は検診シーズンには少なからず頂きます。以前も書きましたが、検診は基準値から外れたデータはすべて異常値として報告されますが、これは隠れた病気を拾い集めるという性質上致し方ないことです。大事なことは基準値を外れたデータがすべて治療の対象ではないということです。例えば心電図などは脚ブロックや軸変異、ST変化などの所見がよく見かけられますが、実際に病的所見かどうかは心電図の現物を見たりしないとわかりませんし、不整脈なども治療の適応になるものは一部です。また白血球や赤血球(貧血や多血症)も大きく基準を外れたり、前年度比で悪化傾向であったり、異常な白血球の種類や鉄欠乏などは精密検査の対象となりますが、いつも少なめ、あるいは多めといった所見は個人差の範疇であることが多いものです。また高脂血症(悪玉:LDLコレステロールや中性脂肪)も食事による影響(変動)も多いものです。どこまでがその方の真の値なのか?などは前年度以前のデータを確認することが重要であり、一時的な食事の偏りで影響を受けていることも多いものです。一旦食生活を見直したり、軽い日常運動を取り入れて、2,3ヶ月後の再検で判断することをお勧めします。またその結果が基準値以上であっても、成人病要素(高血圧、肥満、糖尿、脳血管・心疾患)の有無によって対応は分かれています。すなわち低リスクの方の治療介入基準は有リスク者より甘くなるということです。同じことは糖尿(血糖)でも言えます。朝一番、空腹の血糖値が高めでも、検診では90mg/dlと妙に厳しいものです。実際は110程度まではOKであり、仮に若干高めでも平均血糖値を表すHbA1cなどが高くなければ慌てて内服する必要はありません。血圧なども検診会場での値を鵜呑みにせず、自宅でも朝や夕方(飲酒・入浴前)の血圧をしばらく確認することが重要です。また血圧の値も低ければ低いほうが良いなどというのは怪しいもので、特に昨今は徐々に基準値を下げている傾向があり、高齢者などでの脳貧血のリスクを上げている危惧を持っています。皆で130mmHg以下になどというのはやりすぎであり、年齢とともに基準は甘くして然るべきと思います。ことほど左様に、検診データというのは裏読みが重要です。あくまでのも個人の持病や成人病リスクの背景を見ながら治療介入を決めていくべきものであり、安易に薬に頼る前に一度ご相談頂ければと感じています。日頃の薬の内服はなければないに越したことはありません。