医学部におけるワクチン講座
[2025.02.26]
新型コロナウイルスワクチン騒動をより混乱・悪化させた要因の一つに医療側の混乱があったと思います。積極的に進める一群と慎重・懐疑的な一群が真逆の論争を続けてきたわけで、これらを見た一般の方々の混乱はいかばかりかと感じます。これに行政側の接種誘導などがさらに拍車を掛けました。論争の決着(新コロワクチンは有効かつ安全なのか?)については既に明快な否の結論が出ています。ではなぜあのような不毛な論争が続いたのか?ということについては医師側のワクチンに対する基礎的知識が乏しかったという点が挙げられます。私は昭和59年卒ですが、当時の医学教育に系統立てたワクチン学の授業があった訳ではありません。もちろん免疫学や感染症学などの分野で生体の免疫機構や病原性物質への対応を学ぶわけですが、ワクチンの製造や安全性確保といった分野については極めて乏しいものでした。ワクチン自体も日本脳炎やインフルエンザ、BCG、麻疹程度はありましたが、現在の様な多種多様なものはありませんでした。当然ワクチンの製造過程なども遺伝子テクノロジーの進歩とともに発展した背景があり、リアルタイムにそれらに接した医師以外は専門的知識をバージョンアップすることはなかったと思います。このため新型コロナワクチンが問題になったときに湧いてきた自称専門家の先生方もワクチン本体の製造過程の問題点や副作用の可能性などの知識を有した方はごく少数で、社会的有用性や医療経済的な側面から推すという歪な構造が出来上がった印象です。全体主義的ともいえる公衆衛生面での益を唱える集団と不完全な側面が否定できないワクチンに懐疑的な集団には共通論点が存在しなかったとも言えます。この不毛な状況もアメリカに端を発した動きからようやく一旦振出しに戻り、ワクチン全体の安全性の点検に入る様です。本当に安全なワクチンはどのようなものか?必要なワクチンはどれなのか?ひとつひとつ解決していくことと期待しています。