落とし穴的疾患シリーズ
[2025.03.02]
日常診療をしていると、意外な落とし穴があることに時々ハッとさせられます。もちろん初診の時点である程度の疑いをもってしぼっていくことが常ですが、忘れた頃に地雷を踏むものです。特に高齢者などでは症状の具体性に乏しく、「なんとなく元気がない」、「疲れやすい」「時々ふらつく」、「寝付きがわるくなった」、「元気なのだが微熱が続く」、「味覚が変」、「性格が変わった」、「以前より食欲がない」等々、個々の症状だけ見ると加齢のせいかしらとスルーしたくなるのですが、念の為とチェックすると引掛かって来ることが意外にあるのです。具体例を挙げると甲状腺疾患、甲状腺ホルモンの過多や減少があります。一般的に女性に多いイメージですが、高齢者では男性も含め減少(低下症)に時々遭遇します。また電解質失調、塩分のアンバランスとして骨粗鬆症の薬剤の影響でカルシウムが増え過ぎたり、下剤(酸化マグネシウム)の影響でマグネシウムが増え過ぎたり、他の薬剤への影響などが見られることがあります。脳の問題としては転倒・頭部打撲から時間を経過しての(1〜2ヶ月)硬膜下血腫があり、打撲当日のCTなどでは異常が出ないことから注意が必要です。上腹部痛を主訴として胃の検査をしている陰で狭心症などの心臓発作があったりもしますし、逆に心臓を頑張って調べてたのに最終的には胃酸過多(逆流性食道炎など)だったなんて全く見当違いのこともあります。ふらつきや動悸が見られるなどは危険な不整脈を引き起こす房室ブロックが隠れていることがあり、重篤な場合はペースメーカーなどが必要になります。忘れたころの肺結核や膀胱炎が遷延化しているなども熱以外の症状が乏しいとわかりにくいものです。高齢者以外では小児の貧血では、血液のガンや慢性腸炎などもあり、貧血が主役の場合、急に遊ばなくなったとかなどの漠然とした症状に隠れていることがあり、年のため採血するとびっくりするような高度の貧血があったりします。最後に運動選手(特に陸上選手に多いようですが)の鉄欠乏性貧血は記録やパフォーマンスが落ちて初めて認識することが多く、特に10〜20才代の女性などは生理の影響もあり故障の原因にもなります。できればチーム全体での定期チェック(採血など)などの対応が必要と感じています。とにかくこれらの多くは適正な対応・治療で大事に至ることは避けることができます。高齢者、小児、アスリートなどは意外に落とし穴が多いものです。